不思議なお話を聞きました。
請求書や納品書で使用されている「ノーカーボン紙」が知らない間に接着されていたというのです。
ノーカーボン紙は上質紙と違って製造工程で表面に化学薬品が塗布されています。多分それが何かに反応して糊のような成分となって接着されたでしょうか?
そこで、謎を解明すべく、その怪現象を再現しようと試みました。
今回は「夏休み実験室」です。
まずは、ノーカーボン紙の基本構造を少しおさらいします。
以前にも登場したノーカーボン紙ですが、上用紙と中用紙と下用紙という3種類の紙で構成されています。
上用紙の裏面にはマイクロカプセルが塗布されていて、そのカプセルの中には無色染料が入っています。
下の紙の上面には顕色剤が塗布されています。
上用紙の上からボールペンなどで文字を書く、あるいはドットプリンターで印字すると裏面のマイクロカプセルが壊れて中から無色染料が出ます。下の顕色剤と化学反応を起こして発色します。
では、何がノーカーボン紙を接着させたのでしょうか?
オフィスにあるもので、化学変化を起こしそうなものはそう多くはありません。文房具は何十年と一緒に使用されてきたわけですから、もっと前から現象が起きていたはず。文房具類は、まず容疑者からは外しましょう。
実験方法
今回の現象はめったに起きない珍しい事象です。普段はオフィスで接触しそうにはなくて、ちょっとしたミスで接触してしまうようなものが犯人の可能性が高いです。
ドリンク系にしようと思います。仕事中に滅多にこぼしたりすることはありませんが、ちょっとしたはずみで雫がこぼれたのだとしたらと言う想定です。結構いい「ヨミ」じゃないかと思います。
「水」「お茶」「コーヒー」「スポーツドリンク」を実験の素材に選んでみました。
「コーヒー」はそもそも粘着性がありそうなので、最有力の「ホシ」だと思っています。刑事の勘ってやつですけどね。
3枚綴りの同じ帳票を4つ用意しました。ノーカーボン紙は富士フィルムの感圧紙を使用しました。
①「水」②「お茶」③「コーヒー」④「スポーツドリンク」をストローで同じ分量の水滴を上用紙の上から落として、乾くまで待ってみます。夏場なのですぐに乾くでしょう。
さて、結末はどうなったでしょうか?
「夏休み実験室」の模様を動画で記録しましたので、こちらをご覧ください。
考察
意外な結果となりました。
まず、「スポーツドリンク」だけがノーカーボン紙を接着することができました。紙の繊維までも引き剥がすほどの強い接着具合でした。
「コーヒー」は上用紙を汚しただけで、下の用紙まで浸透することもありませんでした。
さらに「スポーツドリンク」の中のどんな成分が影響したのかを追加実験しました。「塩水」と「砂糖水」で実験したところ、「塩水」だけがノーカーボン紙を接着することができました。
「スポーツドリンク」はノーカーボン紙だけでなく上質紙でも接着できるかもしれないと考え、上質紙でも実験しましたが、上質紙を接着することはありませんでした。
結果
スポーツドリンクの塩分の水滴がノーカーボン紙に落ち、乾燥するとノーカーボン紙は接着をします。
ノーカーボン紙の表面に塗布されている化学薬品を塩分が溶かし、乾燥する時に紙の繊維とともに固まってしまったのではないかと思われます。
みなさま、伝票の作業中にスポーツドリンクの雫をこぼしたりしないように、ご注意ください。
森脇 裕之
株式会社コーユービジネス 本社営業部
実験の結果は意外と塩分でした。
ということは、この酷暑の中で仕事をしていると
ポタリと落ちた汗なんかでも帳票がくっつくかもしれませんね。
それも実験すべきかもしれませんね。
暑い時の汗と冷や汗だったら、どちらが塩分が濃いのかな。
んーと、それも実験だ。