#14 文科系のためのクラウド・コンピューティング

地球には5つの大海洋があります。
そして現代、6つ目の巨大な海が生まれました。
それはこの惑星を覆い尽くしてしまった情報通信ネットワークという巨大な電網の海です。

クラウドの世界をイメージする時、広大な海の中を巨大なクジラが群れをなして、うねりながら、流麗に泳いでいる光景を思い描きます。このクジラたちは時に協力して漁を行い、時には敵対し生存を賭けて争います。

さて、その中でも特に巨大なクジラの一頭である「グーグル」がここまで大きく進化してきた経緯をみてみましょう。

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情報通信の機能を傍観して思うことは、乱暴に言ってしまえば、「フォーム(箱)」と「コンテンツ(内容)」と「エディット(編集)」から成り立っているのだと、と思います。
中でも「エディット(編集)」とはコンテンツを整理、検索、抽出、閲覧するといった機能です。

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グーグルはコンテンツによりそったスタンスで、この「エディット」器官を発達させることで進化してきました。
それは、つまり「検索装置」です。

グーグルが作り上げた驚くべき「装置」は、世界に散在する800億以上のコンテンツを収集、包含して、リスト化しました。
さらに、驚異的な仕組みとして、その膨大な量のサイトを順位付けして、ページから単語を抜き出して、インデックスを作成しました。

グーグルは大クジラとなって、世界を丸呑みしたかのようでした。

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グーグルの採った順位付けの方法はTF(termfrequency)とIDF(inverse document frequency)という検索用アルゴリズム。
TFはページ内に検索された単語がどれくらい含まれているか。IDFは検索単語の特徴性を重視する見方で、一般語に対しては重要度を下げようとする方法です。

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それは、WEB2.0という脅威的に進化した技術を手にした企業のアドバンテージでした。

SNSが発生して、情報の発信者と受信者という立場は不明瞭になりました。不特定多数の閲覧者が神経細胞のように繋がっていきます。

SNSのブックマーク機能などからは集合知が生まれました。

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プロモーションのプランナーたちは、注目A(Attention)・興味I(Inteerest)・検索S(Search)・行動A(Action)・情報共有S(Share)、という「アイサスの法則」を採るのが一般的です。
情報共有S(Share)というのが「集合知」の利用ですね。

この手法で巨大なお腹の中に飲み込まれている、たくさんのピノキオたちをこの手法で踊らせることができます。

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今、企業や自治体が有する端末やサーバ内には、膨大に増えて、整理されていないデータが散在しています。
データベースを構築、整備、管理、運用していくことに費やされる費用もかなりの負担となってきているのが現状です。

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クラウド化への企業の期待は経費負担を減らし、モバイル端末の有効活用などでサービスを向上させること。

政府の狙いは行政情報システム全体の最適化。電子化情報の利用促進。ビッグデータの分析からビジネスチャンスを創出して経済の活性化を図る、病気の予防や犯罪の対策、農業効率化への情報利用を行うなど、盛りだくさんです。

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クラウドサービス会社は「フォーム」も「コンテンツ」も取り込んで、ビッグデータを運用しながら、より巨大なクジラとなっていきます。

しかし、この未知の深海には魔物も潜んでいます。
サイバー攻撃を切り札に自国の危機を脱出しようと目論むようなアジアの大国すら出て来ます。

仮想の公海においても「秩序」こそが重要です。

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昔、習った物理の法則に「エントロピー増大の法則」がありました。
簡単に言えば、すべての事物は、自然のままにしておくと拡散し、無秩序な状態になっていく、ということだったと思います。

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物理の法則が情報分野に当てはまるかどうかは分かりませんが、コンテンツはPCという実体からクラウドという闇に閉ざされた仮想領域の中へ転送・拡散されていくかのようです。
この法則のとおり無秩序になっていくように思えてなりません。

いわば、コンテンツの生命を守ることができるのは「秩序」であり、クラウド・コンピューティングとは秩序と無秩序の戦いの場だと言えますね。

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クラウド・コンピューティングの運用化から計り知れないほどのビジネスチャンスが生まれてくることは間違いありません。
これほどの高濃度のえさ場には、大魚や稚魚、良識ある魚から雑魚(ざこ)や怪魚に至るまで、様々な魚が集まって来ます。

当社も良識ある小魚として、チャンスを掴んでいきたいと考えています。
できれば協業して、一緒にチャンスを掴めればいいですね。

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今回はこんな文章で締めてみました。

「波騒(なみざい)は世の常である。波にまかせて、泳ぎ上手に、雑魚(ざこ)は歌い雑魚は踊る。けれど、誰か知ろう、 百尺下の水の心を。水の深さを。」(吉川英治著「宮本武蔵」最終卷、最終末文)