#8 紙と電子と(防災の季節に思う)

先月9月1日は「防災の日」。

この季節に、日本は地震や幾多の風水害に襲われてきました。
9月は自然災害の月といって良いかもしれません。

関東大震災(1923年)が発生したのは1日でした。
第二室戸台風(1961年)は16日から室戸岬の西方に上陸し日本を縦断、194名の死者を出しました。
洞爺丸台風(1954年)は26日に鹿児島の大隅半島から上陸、さらに発達しながら北海道に接近して、函館港沖では洞爺丸が転覆し、岩内町では3300戸が大火で焼失しました。
伊勢湾台風(1959年)は26日に和歌山県潮岬の西に上陸、6時間あまりで本州を縦断し、甚大な被害を被りました。

それらの教訓を活かし、この季節には全国各地で防災訓練が行われます。

9月5日には「大阪880万人訓練」という災害初期のための擬似体験訓練が実施されました。南海トラフ巨大地震の発生を想定した初の大規模訓練でした。

大阪府内で携帯電話が880万台あると仮定し、その内の約350万台に通知できると推定されていました。
午前11時に携帯電話が一斉に鳴り出すということでしたが、一部の機種には届かず、問い合わせが殺到したそうです。

緊急メールサービスは携帯電話各社ごとに導入された時期がが異なるため、今回受信できたのは、購入から1年未満の機種だったようです。
また、NTTドコモの携帯向けサービスの「エリアメール」を利用していたため、iPhoneにも届かないという状況でした。結果、想定の4割以下程度だったという意見もあるようです。

色々な課題が見えてきたことが大きな成果だったと思います。

140万人に緊急通知できたとして、情報としてのティッピング・ポイント(加速伝達される基準)を越えられたのかどうか?といったことも分析に含まれるのかも知れません。

苦情や要望は多々あるかとは思いますが、いずれにせよ、かつての発災時に比べると画期的な訓練だったことには違いありません。

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今回の訓練の要(かなめ)は携帯電話でした。

電子媒体は「速報性」「大量発信」に優れています。
反面、市場競争による開発合戦から生じる機器・システムの改良が止まらず、利用者の機種のバラつき、導入時期違いによるアプリの不備などが発生して、安定した運用が阻害されます。
また、基地局の停止やバッテリー切れなどによる機器の使用不可能といった状態も考慮しなければいけません。

紙の場合にも使用者を選ばないというアナログ本来の特長はあるものの、即時性に欠けたり情報劣化への対応ができないなどのデメリットがあります。

紙か電子かを問うこと自体が不毛なのかもしれません。その分界となる観点を求めようとする考え方が無意味なのかも知れません。

特に「公共性」が重視される情報発信の場合には、受け手のあらゆる状態を考慮して、様々な媒体を上手く組み合わせる必要があります。
事前の告知にはポスターやチラシなど大量の紙媒体も必要となってきます。なおさら訓練ともなると、発災時の初動にはどうすべきかというレクチャーとともに、それをいつでも確認できるような、最もアナログなツールが必要となります。

紙と電子を組み合わせながら、可能なかぎり必要とされる情報を発信し、常備し、定着させ、いざ緊急の時には有効に活用されることが望ましいのだと思います。

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因みに、「防災の日」が制定された1960年に当社、コーユービジネスの前身であるコーユーセールズが創業いたしました。
当社のZ-CARD(TM)が防災に関われるということに、奇縁を感じて、それがさらなる励みになります。