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#30 「巨大なデータと小さな惑星」 Amazonのビッグデータ戦略など

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※本記事は、2016年当時に配信したメールマガジンを、ホームページ掲載用に一部表現を整えたものです。

情報は爆発しています

米国の調査会社IDCの試算によれば、人類は2013年の1年間で、インターネット上に約2ゼタバイトのデータを蓄積したとされています。

なんと2ゼタバイトです。
「ゼタ」と言われても、すぐには実感しにくい単位ですね。

分からないことは、調べてみましょう。
キロという単位の上にはメガがあり、その上にギガ、さらにテラがあります。ここまでは、何となくなじみがあります。

その上にペタ。これは、初めましてという感じです。
さらにエクサが登場し、その上にようやくゼタが現れます。10の21乗を表す単位です。

ちなみに、その上にはヨタという単位もあります。
これは与太話ではなく、本当の話です。

約2ゼタバイトは、20世紀の終わりまでに全人類が蓄積したデータ量の約300倍以上に匹敵するともいわれています。急激な増加です。

2020年に向けて、これらのデータは約2年で2倍のペースで増加していくとも予測されていました。
情報はまさに今、爆発している状態です。

ビッグデータだの、何だのと言われるわけです。

「ビッグデータ」という言葉は、どこか宝くじの名前のようにも聞こえます。
いかにも機能的で、少し味気ないネーミングのようにも感じます。

もっと感覚的に言うなら、「カオスデータ」と呼びたくなるほどです。
混濁している気配まで含めたくなるからです。

地球

ビッグデータは育ち盛り

本格的なユビキタスの時代に入りました。

ユビキタス。
どこからでもインターネット情報につながる、という考え方です。
今では、歩きながらでも、電車の中でも、多くの人がスマートフォンやタブレットを操作しています。

スマートフォンを使い慣れた人は、かなりの速さで指を動かしています。
他人事ながら、指が疲れないのだろうかと心配になるほどです。

家電や自動車など、さまざまなものがクラウドサーバーに接続されるようになれば、データの蓄積はさらに膨らみます。

好き嫌いのない子どもが、どんどん育つようなものです。

IoT(Internet of Things)によって、2020年には約500億のモノがインターネットに接続されるともいわれていました。

Facebookは1日に8億6,400万人が利用し、10テラバイトのデータ処理をしているとされていました。LINEのユーザー数も、当時5億6,000万人を突破したといわれています。

さらに、交通状況、農業、工業計装、健康管理、防災・安全保障分野などのセンサーネットワークからも、膨大なデータが流入してきます。

増加し続ける蓄積データの規模を想像すると、膨張する宇宙のようにも感じられます。
夜空に見える星は、何万光年も過去の光です。

そして、「ビッグデータ」もまた、膨大な過去のデータの集積です。

人類は「未来の予測」をやめられない

ビッグデータという「過去のデータの総体」を分析することで、ビジネス傾向の推測ができ、感染症の予防や犯罪防止、交通状況の予測など、近い未来の予測に役立てることができます。

つまるところ、「未来の予測」です。

人類は古代からずっと、未来の予測に力を注いできました。

占星術はバビロニアの時代から生まれましたし、マヤ文明にも占い師はいました。日本にも、陰陽師が活躍していた時代がありました。

当時は、「星を読むこと」が最先端の知の営みだったのでしょう。

今は、それが凄まじい量のデータを解析することに変わりました。

現代版の「安倍晴明」と言えるのかもしれません。

「先のことを知りたい」という思いは、人類の変わらない願いなのかもしれません。

正解が分からないまま、先へ進まなければならない現実があります。
そこから何とか抜け出したいという思いが、未来の予測へとつながっているのでしょう。

正解が分からず意見が分かれることは、政治や行政の世界でもよく見られます。

当時話題になっていた中央省庁の地方移転も、そのひとつです。

地方都市へ人の流れを生み、地域を活性化させるという観点から見れば、新たなビジネスや雇用が生まれる可能性があります。良い政策だと感じる方もいるでしょう。

一方で、行政運営上の課題や、職員の生活環境、人材確保への影響を懸念する声も上がっていました。

決定する力、そして決定するための根拠を得たいという思いもまた、「未来の予測」へとつながっているようです。

ビッグデータとビジネス

個人の周りにも、「カオスデータ」と呼びたくなるような情報があふれています。

最近では、画像認識技術を利用して、個人の膨大な写真データを解析し、整理を支援するサービスが登場してきました。

富士フイルム株式会社の「スマートセレクト」や「Google Photos」といったサービスです。

また、AISSY株式会社は、ビッグデータに数値化した味覚データを加えて、味覚トレンドを予測しようと研究しています。
「売れ筋商品」を先読みして市場に出すことも可能になるかもしれません。

Amazonは当日出荷という高度なサービスを実施し、業界を驚かせました。
さらに「予期的な配送」に関する特許も取得しています。

「予期的な配送」とは、利用者の行動パターンを解析し、購入行動を予測するビジネスモデルです。

顧客の注文実績などの要因を分析し、まだ注文していない段階から、商品を箱詰めして出荷準備を進めるという考え方です。

商品は配送拠点やトラック内で待機し、注文と同時に配達へ進むことが想定されているようです。

商品を受け取るまでに時間がかかると購入を思いとどまる顧客がいるため、その課題を解決するための仕組みだとされています。

注文ボタンを押した途端に商品が届いたら、さすがに驚いてしまいますね。

これは、ビッグデータという総体だけではなく、個人単位のスモールデータへ着眼した行動経済学の応用とも言えます。
果たして、Amazonのこうした構想はどこまで実現するのでしょうか。

小さな惑星の歩き方

エントロピー増大則という考え方があります。
熱力学では、自然に放っておくと無秩序へ変化していく、という考え方です。

専門的に説明しようとすると難しいのですが、ここで言いたいのは、地球という限られた世界では、情報も人類も、この大きな流れから逃れにくいのではないかということです。

人類が小さな開かれた空間に暮らしていた黎明期には、秩序に向かって進んでいた時もあったのかもしれません。

少数で、今よりもはるかに広大な世界を移動し、狩猟していた人類は、やがて作物を植えて定住します。
畝を作り、他者と土地を区分けします。中国では、農地が区画された様子から「田」という字形が誕生したともいわれています。
この字は、まさに秩序そのもののようにも見えます。

それが、村となり、国となっていきました。

今、世界の人口は70億人を超えました。
地球はますます小さく、限られた世界として感じられるようになっています。

今はもう、区分けやボーダーだけを軸に考える時代ではなくなりました。

自国のことだけにとらわれた政策は、小さな地球全体に大きな影響を及ぼしてしまいます。

垣根は低くなり、人や情報、経済活動は国境を越えて動いています。
ヨーロッパにおける移民や難民の問題も、ひとつの国だけで解決できるものではありません。

国や地域ごとの利害だけにこだわっていては、自由で健全な経済活動も難しくなります。

当時のアメリカ大統領選挙でも、内向きな主張や強い言葉が目立ち、それに違和感を覚えた方も多かったのではないでしょうか。

世界が小さくなった今、強い切り札を乱暴に切るだけでは、不安が増してしまいます。
これからの時代に必要なのは、対立をあおる力ではなく、状況を冷静に読み解く力なのだと思います。

象は優しい方がいい

ビッグデータも、世界の人口も、まだまだ増えていきそうです。

世界はさらに小さくなり、私たちはより深く混ざり合い、小さなくしゃみにも影響し合うことになります。

アフリカには、なぞなぞのようなことわざがあります。

二頭の象が戦えば、どうなるでしょうか。

答えは、草木が傷みます。

「情けは人のためならず」という言葉を、世界で共有できれば、どれほど素晴らしいでしょうか。
他人を助けることが、結果的に自分を含めた多くの人の利益として返ってくる。
それが、小さな惑星で生きる私たちの現実なのだと思います。

この小さな星で、人々がより暮らしやすくなるために、「未来を予測」すること。

争いや貧困を減らすために、ビッグデータが活用される時が来ることを期待しています。

ビジネスもまた、より良い社会の実現と結びついてこそ、大きな価値を持つのではないでしょうか。

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