Mail Magazine

#9 2013年のはじめに

  • 公開日:

※本記事は、2013年当時に配信したメールマガジンを、ホームページ掲載用に一部表現を整えたものです。

◆◆◆◆◆◆

年明けにふさわしいクイズを出しましょう。

次の3つのヒントから連想されるものはなんでしょうか。

・月見草
・コノハナサクヤヒメ
・三十六景

答えが浮かんだ方も、浮かばなかった方も、そのまま次をお読みください。

◆◆◆◆◆◆

答えは「富士山」です。
末尾にて簡単に解説いたします。

今年(2013年)6月に、世界遺産委員会がカンボジアのプノンペンで開催されます。
日本人として関心が高いのは、富士山がいよいよ世界文化遺産に登録されるのかどうか、という点ではないでしょうか。

富士山は2007年に世界文化遺産の暫定リストに登録されていて、今年はその結果が示される年です。

「文化遺産」の候補と聞いて、不思議に思われた方もおられるかもしれません。
どうして「自然遺産」ではないのかと。

ユネスコの世界遺産に登録しようという運動が起こったのは、1990年代の初めの頃です。
当初は自然遺産への登録を検討していたそうですが、いくつかの課題がありました。

ひとつは、登山道のごみ問題です。
海外の登山家の間でも知られていたほどでした。
それだけ日本人がよく登っている山だということでもあります。

日本人にとって富士山は、単なる登山の山ではなく、その威風を仰ぎ、心を癒される山です。
心のふるさとだからこそ、多くの人々が訪れる第一級の観光地となった結果でもあるのでしょう。

また、「特異な自然」ではないということも課題のひとつだったようです。
コニーデ型と呼ばれる円錐形の山は、世界にはたくさんあるそうです。

とはいえ、富士山のように裾野が広く、どこから眺めても美しい円錐形に見える山は、他にはなかなかないようにも思えます。

そして、観光地としての整備が進み、本来の自然が保全されているとは言いにくい面もあります。
5合目まで自動車用の道路が通じ、5合目には観光バスが駐車できる大型駐車場や土産物売場、食堂などが整備されています。
山頂には郵便局があり、自販機もあります。これでは「自然遺産」としての登録は難しい面があったのかもしれません。

◆◆◆◆◆◆

そこで、世界遺産登録にむけて、富士山の文化的側面が見直されることになりました。

富士山は、奈良時代より火山神、浅間神として信仰されていました。
今でも、全国には約1,300社の浅間信仰の神社があります。

富士宮市に鎮座する富士山本宮浅間大社が総本宮で、富士山を神格化した浅間大神(あさまだいじん)、木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)が祀られています。

また、江戸時代には富士講が盛んになって、たくさんの参拝者が富士詣をしました。
「講」とは、みんなでお金を出し合って参拝に行こうという庶民の工夫ですね。
富士講は、関八州を中心に、信濃、越後、奥羽、長門の方まで分布していたそうです。

そうして、富士山が人々の身近な信仰対象となった時代に、北斎が「冨嶽三十六景」の連作を描きました。

これらの浮世絵がヨーロッパに渡ると、海外の芸術家たちにも大きな影響を与えました。
ゴッホやセザンヌ、ロートレック、マネやモネなど、多くの画家たちに新たな表現の可能性を示したともいわれています。

また、ドビュッシーにもインスピレーションを与え、「海 – 管弦楽のための3つの交響的素描」が生まれるきっかけの一つになったともいわれています。
ちなみにこの管弦楽曲は、近代音楽史上、重要な作品のひとつとされています。

◆◆◆◆◆◆

富士山は、日本人の精神的なよりどころのひとつです。
その圧倒的な存在感と優雅な美しさは、世界に誇れるものです。

「信仰」と「芸術」から見た文化的価値を、ユネスコにぜひ認めてもらいたいですね。

また、政府が推進するビジット・ジャパンでは、2013年までに訪日外国旅行者数を1,500万人にすることを第一目標に掲げています。
富士山が世界遺産になれば、訪日観光の追い風になることが期待されます。

Z-CARD®は、世界遺産というコンテンツでは、飛騨の白川郷の観光案内や、紀伊の熊野古道の参詣道案内に利用されています。
熊野古道では、観光客にマナーを順守してもらうための「参詣道ルール」も記載いたしました。

Z-CARD®を富士山の登山道の案内に利用してもらえれば、美観保全に関する啓発にも活用できそうに思います。

今年もZ-CARD®が新たな場面で活躍できますよう、ぜひ皆様のお力添えをよろしくお願いいたします。

- - - - - - - - - - - - - - - -

冒頭のクイズの答えについて、簡単に解説いたします。

・月見草
太宰治の短編小説「富嶽百景」にある有名な一節に、「富士には月見草がよく似合う」という言葉があります。
富士山の悠久なる雄姿と、月見草の健気で儚げな様子を対比させた印象深い言葉です。

太宰治は、この言葉をきっかけに生きる力を回復します。
太宰の多くの作品は、彼の人生が背景に絡んでいます。
御坂峠(山梨県)には、この名文が刻まれた碑が建立されています。

・コノハナサクヤヒメ
コノハナサクヤヒメは、富士山を神体山とする富士山本宮浅間大社と、国内の約1,300社の浅間神社に祀られています。

火の神であり、社伝では水の神ともされ、「活火山である富士山」を鎮める存在として祀られてきました。
富士山への畏敬や祈りの対象として、各地の神域で大切に受け継がれてきた存在といえるのではないでしょうか。

・三十六景
「冨嶽三十六景」は、葛飾北斎が描いた浮世絵です。
1823年(文政6年)頃から作画が始まり、1831年(天保2年)頃から1835年(天保4年)頃にかけて刊行されました。

発表当時の北斎は、なんと72歳。
その作品が、後に世界の芸術家たちに大きな影響を与えることになります。

北斎の元気にあやかりたいものですね。
最後になりましたが、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。