「用紙が反るのは何故だろう?」小さな実験室2018
世の中、いろんな物が反(そ)るのです。
ベニア板が反る原因はご推察のとおり乾燥だったりします。
赤ちゃんが反るのは、抱かれ心地が悪い時。
相撲取りが反るのは、重心の位置を合わせるため。
真っ直ぐに立つと倒れちゃいますからね。たぶん。
と、いろいろな者や物が色々な理由や原因で「反る」のですが、
さて、当社の分野としては、用紙が「反る」状況を解明したいと思います。
今回は、「小さな実験室2018」です。
用紙に目ができるとき
まず、用紙には「目」があります。
「木目」とか「すり鉢の目」「畳の目」などの「目」です。
筋状のものが一定方向に並んでいるイメージですね。
用紙を製造するには、まず木材を細かく断裁したチップと呼ばれるものを、高温・高圧で煮ます。樹脂が溶けて、繊維が抽出されます。この繊維が高速で進みながら脱水され、圧力をかけられ、乾燥される時に、流れ方向に並びながら結合します。
そうして、紙に目(流れ)ができます。
製造された用紙から、平判状に断裁する時に、長辺と平行に流れができるのを「縦目取り」、短辺と平行に流れができるのを「横目取り」と言います。
実験1「用紙の目を曲がり具合で確認しよう」
用紙は、目の流れに沿って曲がりやすいという性質があります。
まず、四角く切り取った用紙を8割くらいが飛び出すようにして机の端に支えます。
これをタテ目方向とヨコ目方向で試してみます。
下方へのしなり具合で、よくしなる方向に沿って、紙の目が流れています。
実験2「用紙の目を破れ方で確認しよう」
用紙は、目の流れに沿って裂けやすいという性質があります。
ヨコ目方向に破ろうとすると裂けにくく、裂け目がジグザグ状になったりします。
因みに、「横紙破り(よこがみやぶり)」という言葉は、この用紙の性質から生まれたことわざです。無理を押し通そうとすること、です。
実験3「紙の目と反りの関係を探ろう」
ここから、いろいろな状況で用紙がどう反るのかを実験してみました。
「小さな実験室2018」の模様を動画で記録しましたので、こちらをご覧ください。
紙の目と加工上の注意
・製本加工の場合
用紙は目に沿った方向が折れにくく、裂けにくいという特性があります。
製本加工はタテ目になるようにしなければいけません。
目に対して垂直方向に曲がりやすい性質がありますので、ページがめくり易い仕上げにすることができます。
間違えてヨコ目にしてしまうと、表紙の折り部分の表面が裂けてしまったり、中のページがめくりにくくなったりします。
・折り加工の場合
折り加工が含まれるパンフレットは、製本加工と同様に、紙の目に沿った折りにします。
目を間違えると、きれいに折れなかったり、折り部分の用紙の表面が裂けてしまったりします。
・ポストカード(タテ型)や名刺(タテ型)の場合
用紙をタテ目にすることで、しっかりと持ち易いカードに仕上げることができます。
・ミシン加工の場合
紙の目に沿ってミシンを入れると切れ易いミシンになります。
ビジネスフォームの加工の場合、ロール状の原紙を使用しますので、全てタテ目となっています。
そこで、ヨコミシンはミシン対比など、さらなる工夫が必要となります。
考察
用紙のタテとヨコの方向の違いで、曲がりやすい、折りやすいなどの性質が変わりますので、加工を施す時、作業現場では十分に注意されています。
製品になった状態で、利用者が紙の目を気にすることはありませんが、実は用紙はデリケートな材料だということが今回の実験でお分かり頂けたのではないでしょうか。
森脇 裕之
株式会社コーユービジネス 関西営業部
用紙に目があれば
編み物にも目があります。
慎重に「目」を読まないと、後が大変。
ゴルフ好きな人は、
「芝目」を正確に読みたいでしょう。
「目」は読むもの。
今までに経験したことが無い「目」に出会うと
「目新しい」なんて、言うのでしょうか。