プリント処理の現場では、切り取りミシンでの苦労を大勢の方が経験されていると思います。
ミシンが原因によるトラブルは多々発生します。
- 切り取りにくい
- ミシン部分で裂けてしまう
- ミシン部分の折り目がプリンター内で引っかかる
- プリントアウトで元のように畳めず、乱雑に折り重なる。
ビジネスフォームの製造とは、「切り取りミシン」を改良し続けるということ。そう言ってもいいくらいミシンはデリケートで高度な技術で加工されているのです。
今回は、そのような「切り取りミシン」のトラブルの対応方法をご案内いたします。
ビジネスフォーム(以下、「フォーム」という)には、横に入っているミシンと縦に入っているミシンがあります。
〈横ミシンの刃〉
横ミシンは、帳票単位で切り離すためのミシンです。
横ミシンの刃は薄く長細い板のような形状になっています。
これを横ミシン胴(シリンダー)にボルトで取り付けます。締め付けが緩かったり、歪みが生じたりするとミシンの入り方が甘くなります。
当社では、一定の力で締め付けるために、必ずトルク付きスパナを使用する規定となっています。
横ミシンは、一定回数を使用すると交換をします。
〈縦ミシンの刃〉
フォームの両端には、帳票用プリンターの送り装置にセットするための穴が縦に並んでいます。
縦ミシンはその端の部分を切り離すためのミシンです。
縦ミシンの刃は円盤状になっています。
ミシン刃は使用するほど鈍ります。縦ミシン刃は20〜30回ほど研磨して使用することができますが、研磨回数が増えると刃先までの長さが短くなって、それに伴ってカット部も短くなります。
当社では基準値を決め、それ以下になると使用を中止する廃棄規定を設けています。
切り取り易くしすぎると、少しの力でミシン目から裂けてしまいます。
切れやすさの程度が重要となります。
ほど良い切れやすさは用紙の厚みによっても変わりますし、パーツ数(複写枚数)によっても変わります。プリンターの機種によっても、その仕様は変わります。
ミシンの切れ方のバランスは、カット部とアンカット部の比率で調整します。
つまり、切れている部分と切れていない部分ですね。
当社は、カット部:アンカット部の対比は、上質紙だったら2mm:0.8mmなど、パーツ数(複写枚数)、封筒加工などそれぞれによって基準を設けています。さらに様々な条件で、バランスは変わりますので、縦ミシンは約65種類、横ミシンは約60種類の対比違いのものを常備しています。
さらに、切れやすい横ミシンを加工する方法に紙の両端に切れ目を入れるという方法があります。ミシン目から裂けてしまわないように、両端は留めておくのが基本ですが、切れやすくする手段としてこの方法を採ることがあります。
A社様の帳票では、縦ミシンが切れ易くなっていたため、横ミシンで切り離そうとした時に用紙が引っ張られて縦ミシンが裂けるという現象が発生しました。
縦ミシンは、ほど良い硬さも必要となりますので、カット部とアンカット部の比率を調整し、この問題を解消することができました。
また、縦ミシンと横ミシンの交差部で、横ミシンの刃を削ってアンカットにするという方法で上手くいく場合もあります。
用紙を切り離しやすいミシンに「マイクロミシン」があります。
カット部、アンカット部どちらも1mm以下という非常に繊細なミシンです。
B社様の帳票では、厚めの用紙に「マイクロミシン」を加工したところ、ミシン目で紙が割れてしまうという現象が発生しました。
カット部:アンカット部、0.8mm:0.2mmをアンカット部0.3mmに変更し、この問題を解消することができました。
アンカット部をわずか0.1mm変更するだけで解決するくらい、繊細なバランスが要求されるミシンです。
電化製品に「取扱説明書」があるように、ビジネスフォームに「取扱説明書」があってもいいかもしれませんね。うん、きっといいかも。
帳票を切り離す際には、手の持ち方を少しご注意頂くだけでも、トラブルを解消できる場合があります。
- まず、利き手でない方の手を下の帳票の端に添えて、用紙を固定します。
- 利き手は帳票の上部の端の方を持ちます。
- 紙端からミシン部に力が伝わるように上方に引っ張り、丁寧に切り離してください。(横ミシンで折り目をつけると、さらに切り離しやすくなります)
お急ぎの時でも、落ち着いてこの方法で切り離されるのが良いのではないかと思います。(ミシン目の切れやすさは、お客様の感じ方でも大きな差があります。切れにくいと感じることがございましたら、お気軽に当社の営業担当者にご相談ください。)
今回は、永遠の課題である「切り取りミシンのトラブル対策」をご案内させていただきました。当社の工場では日夜この問題と戦い続けているのです。
大庭 克俊
株式会社コーユービジネス 本社営業統括部
「トリセツ」という歌には
羨ましい歌詞があります。
「こんな私だけど笑って許してね」
ああ、こんなことをお客様に言えれば。
実に羨ましいかぎりなのです。