#24「日本人のロボット好きにもほどがある」—ネコだってロボットだしー

日本の男性はあきれるほどにロボット好きです。
家電量販店なんかでお掃除ロボットの実演コーナーとかがあれば、見飽きることがありません。
ほんとに欲しいって、心から思います。
でも、筆者のような小市民の家庭では奥方に言われるんです。「小さい家で、狭い隙間しか無いような所で、動く場所が無かったら掃除機もかわいそうじゃない」。
それはそうなんだけどなぁ。でも、連れて帰りたいし。

あの「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機。」なんて言っていたイギリスのメーカーがついに、ロボット掃除機の分野へ参入したそうだし。日本のメーカーに対抗して、開発費に合わない破格で売り出したら、大損(だいそん)だろうけどね。

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日本人だけだそうですね、お掃除ロボットに名前をつけちゃったり、話しかけたりするのは。修理に出す時も、「かわいそうだから、早く直してもらえますか」なんて言ってくるそうです。そのうちに、お掃除ロボット用のお着替え衣装なんていうのが売り出されるかもしれませんね。

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経済産業省はロボットを分類して、日本・アメリカ・欧州で国際競争力を比較しています。
日本が優れている分野は「産業用ロボット」「建設ロボット」「エンターテイメントロボット」など。モノ作りや品質にこだわるテクノロジー大国という日本のイメージがよく現れています。
アメリカが他国より進んでいるのは「探査ロボット」「海洋ロボット」「原子力ロボット」「宇宙ロボット」「エンターテイメントロボット」など。いつまでもフロンティア精神を持っている国のようです。軍事関係にも経費を注ぎ込んでいるようですね。
欧州の得意は「農業用ロボット」「畜産ロボット」「福祉ロボット」「海洋ロボット」「原子力ロボット」など。福祉ロボットの技術が先行しているのは、うらやましいですね。日本が今後目指すべき方向です。

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産業用ロボットでは日本企業は世界シェアのトップを維持しています。2012年末時点で世界の産業用ロボットの稼働台数は約123万5,000台。その約4分の1の31万台を日本企業が占めていました。

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ロボットに対する思いは、日本と西洋ではかなり違います。
日本のロボットの始まりは手塚治虫さんの描いた漫画「鉄腕アトム」であることは誰もが認めることだと思います。ロボット工学の学者の多くの方が幼少期にアトムに出逢って、ロボット技術者を目指すきっかけとなったそうです。漫画とはいえ、日本のロボット開発に大きく貢献した作品です。
物語の中では「ロボット法」が制定されていて、人間に準じた権利と地位をロボットに保証しています。アトムはロボットであることに悩んだりします。感情が豊かで、自己を犠牲にしても人間を助けるという正義感の強いキャラクターでした。

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海外のロボット感はどうでしょうか?
もともと「ロボット」いう言葉はチェコスロバキアの小説家カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲の中に初めて登場しました。SFの古典的傑作です。語源はrobotaという強制労働を意味するチェコ語で、戯曲の中でも人の代わりに労働をさせることが目的で作られたものでした。ロボットは当時のチェコスロバキアの奴隷のような労働者階級を象徴する存在で、物語の中では反乱を行います。

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アイザック・アシモフの小説「われはロボット」(ハヤカワ文庫)のロボット三原則は有名です。
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
まるで、反乱することを前提とした原則のようだし、どこか奴隷制度のにおいがします。
キリスト圏では人間が人造人間を創ることは、神がするべきことへの介入で、してはいけない行為です。そんな冒涜(ぼうとく)に対する代償として、反乱によって滅ぼされるかもと考えたのかもしれません。
確かに、西洋では反乱する話が多いです。映画の「ブレードランナー」のレプリカントは哲学的存在意義に目覚めて製造主を殺害しますし、「ターミネーター」のスカイネットは自我に目覚めて人類の殲滅(せんめつ)を図ろうとします。

造られたものに創造主が滅ぼされるのではないかという恐怖の心理を「フランケンシュタイン・コンプレックス」と言うそうです。
アメリカの子供たちはロボットのおもちゃを恐怖に対する興味として感じるそうです。ホラー感覚に近いですね。明らかに日本の子供とは違います。

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日本独自の思想に「山川草木悉皆成仏」(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)という考え方があります。どんなものにも仏性が宿るという思想です。山を祀る人がいれば、岩を祀る人がいます。昔は朝、目覚めるとお天道様(おてんとさん:太陽)に二拍手する人がいました。道具だって百年経つと付喪神(つくもがみ)となっちゃう国です。
ロボットだって悩んで当然ですし、親友のように助けてくれたって不思議ではありません。

アニメーションの言葉の由来はラテン語のanimaで霊魂を意味します。生命のないものに命を与えて動くようにすること。何にでも仏性を宿らせる日本人の思想の上にあるからこそ、アニメーションもロボットも違和感なく発展することができて、世界中が不思議がるほどユニークな文化となったのだと思います。

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ロボットには人工知能が欠かせませんが、その人工知能の進化はとどまるところを知りません。

1997年、IBM のスーパーコンピューター「ディープブルー」が、チェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフを撃破。

2009年、スマートフォンに搭載された「Pocket Fritz 4」がアルゼンチンで開催されたチェスの大会で、9勝1分の戦績を収め、グランドマスター級の評価。

2011 年、IBMの人工知能「ワトソン」がアメリカの人気クイズ番組「ジェパディ!」で、2 人のチャンピオンに勝利。

2013年、クラスターマシン(東京大学の667台のiMacを結合させたシステム)が将棋で現役A級棋士である三浦弘行八段に勝利。

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また、人工知能が自我に目覚めるか、という議論があります。
学者の間では、結構ホットな話題です。
物語の中では人間に反旗を翻すのは、人工知能が自我に目覚めた時です。
「2001年宇宙の旅」で宇宙船ディスカバリー号に搭載されて、船内すべての制御をおこなっていたのが人工知能「HAL9000」。HALは二つの相反する命令で混乱し、反乱を起こします。強制終了しようとすると、「怖いよ」「やめてくれ」って言っていたのが印象的です。
人間以上の知能を持った存在に自我を持たせてしまった時、果たして主従の関係を保てるのでしょうか?
「電源を切る」ことだけが人間の最後の持ち札というのも情けないです。

既に意識が宿っているのかもしれないという説もあります。身体(ハード)的な違いから、お互いにコミュニケーションを取るすべが無いだけなんだと。

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コミュニケーションといえば、シャープのお掃除ロボットは関西弁でしゃべるそうです。
何でも人と同格にしたがる関西人の愛着心にしっかりとつけ込んでますね〜。
関西人の人格化は「あめちゃん」「おまめさん」「天神さん」なんて序の口です。母親が「コープさん」って言っていたなぁ。何やそれって思ったけど、いつの間にか主婦の間で流行っていたんでしょうね。

勝手な想像ですが、シャープのお掃除ロボットは電源を入れた時に「なんでやねん」とか、電源を切る時に「やってられへんは」って言うのでしょうか。
掃除の途中で「部屋、狭っま〜!」なんて言われたら、ショックですよねぇ。

お掃除ロボット、奥方の言うとおり買うのやめとこうかな。