「帳票電子化が中小企業の時代に」をわかりやすく解説
帳票電子化は、業務効率化と保存ルールを同時に考える段階へ
紙の帳票を減らすだけでなく、保存方法と運用ルールの整理が重要です
請求書、領収書、契約書、注文書、見積書などの帳票は、紙で保管するだけでなく、電子データとして適切に保存・管理することが求められる場面が増えています。
帳票電子化には、印刷費や郵送費、保管スペースの削減、検索性の向上、経理・総務部門の業務効率化など、さまざまなメリットがあります。一方で、税務関係書類を電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の区分や保存要件を理解したうえで運用する必要があります。
特に中小企業では、「紙で受け取った書類をスキャンして保存する場合」と「PDFの請求書などを電子データで受け取った場合」を混同しやすいため、まずは自社の帳票がどの保存区分に該当するかを整理することが重要です。
本記事は、2026年5月時点の公表情報をもとに、帳票電子化を検討する際の基本的な考え方を整理したものです。実際の運用にあたっては、最新の法令・国税庁資料・顧問税理士等の確認が必要です。
まず押さえたい電子帳簿保存法の3区分
帳票電子化では、対象書類ごとに保存方法を分けて考えます
電子帳簿保存法は、税法上保存が必要な帳簿や書類を電子データで保存するための制度です。実務上は、主に次の3区分で整理すると理解しやすくなります。
電子帳簿等保存
会計ソフト等で最初から電子的に作成した帳簿や書類を、電子データのまま保存する方法です。仕訳帳、総勘定元帳、決算関係書類などが関係します。
対象例:会計ソフトで作成した帳簿、電子的に作成した決算関係書類などスキャナ保存
紙で受け取った請求書や領収書、紙で作成して取引先へ渡した書類の控えなどを、スマートフォンやスキャナで読み取って保存する方法です。
対象例:紙の契約書、請求書、領収書、納品書、見積書、注文書など電子取引データ保存
PDFの請求書をメールで受け取る、Webサイトから領収書をダウンロードするなど、電子データで授受した取引情報を電子データのまま保存する方法です。
対象例:メール添付の請求書、クラウド上の領収書、Web発行の見積書など紙で受け取った書類をデータ化する場合は「スキャナ保存」、最初から電子データで授受した書類は「電子取引データ保存」として整理します。帳票をスキャンしてデータ化することと、電子帳簿保存法の保存要件を満たして運用することは、分けて考える必要があります。
帳票電子化のメリット
保管・検索・共有・問い合わせ対応の効率化につながります
帳票電子化は、紙を減らすためだけの取り組みではありません。帳票の発行、受領、承認、保存、検索、問い合わせ対応まで含めて業務フローを見直すことで、部門全体の生産性向上が期待できます。
- コスト削減
- 印刷費、郵送費、封入作業費、保管スペースなど、紙帳票に付随するコストの削減につながります。
- 検索性の向上
- 日付、金額、取引先、文書種別などで検索できるようにすることで、確認作業や問い合わせ対応を効率化できます。
- 保管スペースの削減
- キャビネットや倉庫に保管していた紙書類を減らすことで、オフィススペースを有効活用できます。
- テレワーク対応
- 電子データで確認できる環境を整えることで、経理・総務担当者が場所に依存せず確認作業を進めやすくなります。
- 内部統制の強化
- 訂正・削除履歴やアクセス権限を管理できるシステムを活用することで、書類管理の透明性を高められます。
- 顧客対応の迅速化
- 帳票データを素早く検索できれば、取引先や顧客からの確認依頼にも迅速に対応しやすくなります。
導入時には、保存ルール、担当部署、検索方法、紙原本の扱い、税務調査時の出力方法をあらかじめ決めておくことが重要です。メリットだけでなく、運用後に継続できる体制まで含めて検討しましょう。
電子取引データ保存で確認すべきこと
電子で授受した取引情報は、電子データのまま保存します
メール、クラウドサービス、Webサイト、EDIなどを通じて、請求書・領収書・契約書・見積書・注文書などに相当する電子データをやり取りした場合は、その電子データを保存する必要があります。
受け取ったデータだけでなく、自社から取引先へ送った電子データも保存対象です。保存するファイル形式は限定されていませんが、税務調査等で確認できるよう、保存先や検索方法を社内で統一しておくことが重要です。
改ざん防止措置
タイムスタンプの付与、訂正・削除履歴が残るシステムの利用、または改ざん防止のための事務処理規程を定めて運用する方法などがあります。
検索性の確保
原則として、「日付」「金額」「取引先」で検索できるようにします。索引簿の作成や、規則的なファイル名を付けて保存する方法も選択肢になります。
見読可能性の確保
税務調査等で確認できるように、ディスプレイやプリンタ等を備え付け、必要に応じて速やかに表示・出力できる状態にしておきます。
令和6年1月以降は、電子取引データを単に紙へ印刷して保存するだけではなく、電子データそのものを保存する対応が必要です。社内確認用として紙に出力すること自体を妨げるものではありませんが、保存対象となるのは電子データです。
| 保存対象 | 主な例 | 運用上のポイント |
|---|---|---|
| メール添付の請求書 | PDF請求書、PDF見積書など | 添付のPDFファイル等(または取引内容が記載されたメール本文)を、検索できる状態で保存します。 |
| Webサイトから取得した領収書 | ECサイト、クラウドサービス、交通費精算など | ダウンロード日だけでなく、取引日・金額・取引先が分かる形で保存します。 |
| クラウド上で授受した書類 | クラウド請求書、電子契約、EDIデータなど | サービス内で保存要件を満たせるか、エクスポートや検索方法を確認します。 |
一定の条件を満たす場合には、検索要件の一部または全部が不要となる措置や、保存要件に沿った対応が困難な場合の猶予措置があります。ただし、税務調査等で電子データのダウンロードの求めに応じられる状態にしておくことが重要です。
紙の帳票を電子化するスキャナ保存
紙で受け取った書類は、要件を満たすことで電子データとして保存できる場合があります
取引先から紙で受け取った請求書や領収書、自社が紙で作成して取引先に渡した書類の控えなどは、スマートフォンやスキャナで読み取った電子データとして保存できる場合があります。
スキャナ保存を始めるための手続きは、原則として一切不要(事前承認は廃止)です。ただし、過去に紙で受け取って既に社内に保管してある古い重要書類(過去分)を後からスキャナ保存する場合に限り、あらかじめ税務署への届出が必要です。
POINT 01 対象書類を確認する
契約書、納品書、請求書、領収書などの重要書類、見積書、注文書、検収書などの一般書類が対象になります。決算関係書類はスキャナ保存の対象外です。
POINT 02 入力期間を守る
重要書類は、作成または受領後おおむね7営業日以内に保存する早期入力方式、または業務処理サイクルの期間を経過した後おおむね7営業日以内に保存する方式があります。業務処理サイクルは最長2か月以内です。
POINT 03 読み取り要件を満たす
スキャナ保存では、解像度200dpi相当以上で読み取ること、原則としてカラー画像で読み取ることなどの要件があります。令和6年1月以降、解像度・階調・大きさに関する情報そのものを保存する要件は廃止されていますが、読み取り時の要件は引き続き確認が必要です。
POINT 04 真実性を確保する
入力期間内にタイムスタンプを付与する方法のほか、入力期間内にスキャナ保存したことを確認できるシステムを使用する方法があります。また、訂正・削除履歴を確認できるシステム、または訂正・削除できないシステムを使用することも重要です。
POINT 05 帳簿との関連性を確認できるようにする
令和6年1月以降、帳簿との相互関連性の確保が必要な書類は、契約書・領収書・送り状・納品書など、資金や物の流れに直結・連動する重要書類に限定されています。
| 方式 | 入力期間の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 早期入力方式 | 書類の作成または受領後、おおむね7営業日以内 | 受領後、速やかにスキャンして保存する方法です。 |
| 業務処理サイクル方式 | 最長2か月以内の業務処理サイクル後、おおむね7営業日以内 | 各事務の処理規程を定めている場合に採用できます。 |
※一般書類については、入力期間の制限なく入力することも可能です。実際の運用では、対象書類の区分を事前に整理してください。
スキャナ保存では、紙をスキャンすれば終わりではなく、保存ルール、検索方法、出力方法、システム仕様書や操作説明書の備付けまで含めて運用設計することが重要です。
令和6年以降・令和7年度改正で押さえたい実務ポイント
電子取引はデータ保存が前提
メールやクラウドで授受した請求書・領収書等は、電子データそのものを保存する必要があります。紙に印刷して確認する場合でも、電子データの保存が必要です。
スキャナ保存の一部要件が簡素化
令和6年1月以降、スキャナで読み取った際の解像度・階調・大きさに関する情報の保存や、入力者等情報の確認要件は不要になっています。
相互関連性の対象が限定
スキャナ保存における帳簿との相互関連性の確保は、資金や物の流れに直結・連動する重要書類に限定されています。
電子取引データ保存制度の見直し
令和7年度税制改正では、電子取引データの保存制度について、一定の仕組みを利用する場合の検索要件をさらに簡素化するなど、実務負担を軽減する見直しが行われています。
帳票電子化を進める基本ステップ
帳票電子化は、システムを導入するだけでは完了しません。対象書類の棚卸し、保存区分の整理、社内ルールの整備、運用担当者の教育まで含めて進めることが重要です。
STEP 01 対象帳票を棚卸しする
請求書、領収書、契約書、見積書、注文書、納品書など、自社で発行・受領・保管している帳票を一覧化します。紙で受け取るもの、電子で受け取るもの、紙で発行するもの、電子で発行するものを分けて整理します。
STEP 02 保存区分を決める
帳票ごとに、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存のどれに該当するかを整理します。区分を明確にすることで、必要な保存要件や運用ルールを判断しやすくなります。
STEP 03 保存ルールを整備する
ファイル名の付け方、保存先、検索項目、担当部署、確認フロー、紙原本の取扱い、税務調査時の出力方法などを社内ルールとして定めます。
STEP 04 対応システムや外部委託を検討する
帳票量が多い場合や、検索性・証跡管理・承認フローを整えたい場合は、文書管理システムや電子帳簿保存法対応ソフトの利用を検討します。スキャン作業やデータ化作業を外部委託する方法もあります。
STEP 05 運用開始後に定期的に見直す
法改正、帳票種類の追加、業務フローの変更に合わせて、保存ルールやシステム設定を見直します。電子化後も、検索できるか、出力できるか、担当者が迷わず運用できるかを確認することが重要です。
帳票電子化の導入をサポートします
紙帳票の整理・スキャン・データ化・納品形式の設計を支援します
帳票電子化を進めるには、対象書類の整理、スキャン、データ化、ファイル名設計、検索項目の設定、保存先の整備など、複数の作業が発生します。社内リソースだけで対応が難しい場合は、外部委託を活用することで導入時の負担を抑えられます。
当社では、各種文書や帳票の電子化をサポートし、業務効率化や保管コスト削減につながる運用をご提案します。紙帳票の整理からデータ化、納品形式の設計まで、用途や件数に応じて対応いたします。
なお、電子帳簿保存法上の最終的な保存要件の判断や税務上の取扱いについては、国税庁の最新資料や顧問税理士等への確認が必要です。
- 紙帳票を電子化したい
- 過去書類をスキャンして整理したい
- 検索しやすいファイル名で納品してほしい
- 帳票量が多く社内でスキャン対応できない
- 電子化後の保管ルールを整理したい
- 文書管理システムに投入しやすい形式にしたい
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